お品書きの無い店にて

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久しぶりに会う友人と気になっていた料理店に行ってみた。お品書きが無く、女将お任せのフルコースのみだ。5時なのに既に常連さんで一杯。
そんな中で友人は話し始めた。

下の娘がこの春に就職して横浜まで頑張って通っているという。そう言ってスマホを見せた画面には娘の写真。両手には膝までありそうな大きな魚を持っている。まるですしざんまいの社長のようだ。G.Wに社員旅行のイベントで釣ってきたという。

「お嬢さん、楽しそうだね」と声かけると、眼鏡の奥で笑みを浮かべた彼。夏フェスにハマッテいたが最近は韓流だとも言っていた。子育てからようやく解放されて夫婦水入らずに戻って悠々自適な生活がはじまるのだろうと思った。

カウンターの奥から4リットルのペットボトルの焼酎を片手に持った女将がツカツカとやってきた。おもむろにジョッキにドボドボと半分投入していった焼酎をホッピーで割りながら話の続きに耳を傾けた。
上の男の子も地方で暮らしているし、同居されていたお母さんが他界されてから使われていない1LDKもそのままだから部屋が多すぎて維持が大変だと言った。

そう、彼の家は三階建て二世帯住宅だったのである。1階が亡きお母さんの1LDK+水回り+仕事場、2階がLDK+和室+水回り、3階が3部屋でざっと50坪。去年、18年ぶりに屋根と外壁を塗りなおした金額が150万円越え。敷地は60坪近いので年4回の草取りも悩みの種だそうだ、夏はとくに辛い、もれなくギックリ腰のオマケ付だったという。「一層のこと、取り壊して土地を半分売却して残りの半分に夫婦二人の小さな家を建てようかな」と身も蓋もないことを言い出した。
今の家は玄関が一か所のみだから賃貸や民泊にも玄関を2か所に改造しないと厳しい。けれど、駅からも近いし、トランクルームや自転車置場など、工夫すれば活用価値はまだまだありそうだ。
一棟ごとシェアハウスに貸して自分たちは都会の駅近の賃貸マンションに移り住み、数年毎にマンションホッピングを楽しむなんていうのもアリだろう。

肝心なのは、彼がこれからの生活のイメージをしっかり描き、ほんの少しの勇気を持てばきっとまた眼鏡の奥の輝きが一層増すことだろう。そう思いながら、2杯のホッピーと湿ったアジフライと肉ジャガモドキを食べ、センベロ食堂を後にしたのだった。

shige

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